歯並び不正の正体とは?~「あごの発育不良」について~

ブラケット矯正
突然ですが、「歯並びが悪い野生動物」を想像できますか? もしいたとしたら、きちんと歯が噛み合わず食べ物をうまく摂取できないため、きっと生きてはいけないでしょう。
大昔の人類にも歯並びが悪い人はほとんどいなかったようです。現代社会でも、昔ながらの暮らしをしている民族だと人々の歯並びはとても良いそうです。その一方で、同じ国でも近代化した食べ物を食べている市街地に住む人々は、急激に歯並びが悪くなっていると言われています。
「歯並びは遺伝する」というイメージがあります。しかし、遺伝が歯並びに持つ影響力はわずか2~5%程度と言われており、実は生まれつきの要因よりも、生まれてからの要因の方がずっと大きいとされています。つまり、「どんな環境で育ったか」「どんな食生活をしていたか」「どんな癖をもっていたか」という要因によって、その人の歯並びは変わってくるのです。
現代人は昔の人に比べるとやわらかい食べ物を食べる傾向にあり、1回の食事で噛む回数が大幅に減っています。このように食べ物を噛む回数が少ないと、あごの周りや唇、舌の筋力は弱体化。この筋力の低下によって、次に説明するような「あごの発育不良」が起きるのです。

『あごの発育不良』による顔立ちの違い

良い成長は顔の骨が前に成長しています。それに対し、悪い成長は顔の骨が下に成長しており、下あごの骨の形も縦長に変化しています。
注目していただきたいのは顔立ちです。悪い成長の方がより縦に間延びした顔立ちに成長します。
では、この良い成長と悪い成長を分ける要因は何か・・・、それは普段の『舌の位置』です。
舌がいつも上あごにぴったりとくっついていれば、舌の筋肉の力に押されるため、上あごが下に落ちて成長してくることはありません。この『舌の位置』が『あごの発育不良』の重要なカギになります。
口周りの筋力が弱くなり、いつもお口をポカンと開いて口で呼吸していれば、当然いつも舌は下がっています。
そして、舌がぴったりとくっついていない時、普段舌がどこにあるかによってさまざまな種類の歯並びに変化するのです。
では、あごの発育不良により悪影響を及ぼすのは、歯並びだけでしょうか。実は、あごの発育不良は、姿勢と呼吸にも大きく関わってくるのです。

姿勢と呼吸にも関わるあごの発育不良

上あごのすぐ上には鼻気道があります。上あごが小さければ、鼻の空気の通り道も小さくなります。また、下あごの発育が悪ければ、下あごの後ろにある咽頭の気道も押しつぶされたような形になり、気道も細くなってしまいます。
鼻気道や咽頭気道が押しつぶされたような状態になると息苦しくなり、自然と気道を開くような姿勢をとるようになります。つまり猫背やストレートネックは気道確保の結果として起きるのです。この姿勢をとると口が開きやすくなり、「口呼吸」をするようになるのです。口呼吸は様々な疾患を引き起こし、現代病とも言われる多くの病気と強い関係があるのです。
このように、あごの発育不良は呼吸の問題と表裏一体です。さらに、呼吸に問題があると、睡眠の問題にもつながります。そして、睡眠が十分行われないと、毎日の生活の活力にも影響します。また、呼吸の問題はアレルギー疾患と大きく関わると言われているのです。


その他の歯並びが悪くなる原因

歯並びが悪くなる原因は、遺伝などの先天的な要因と、顎の発育不良や虫歯・歯周病、指しゃぶりなどの悪い癖などの後天的な要因があります。



遺伝

遺伝が歯並びに持つ影響力は2~5%程度と言われています。しかし、ご両親の筋肉や骨格などは当然遺伝します。その結果、同じような癖が生じて、歯並びが似る可能性はあるでしょう。なお、下顎前突(受け口)は遺伝の影響が大きいと言われています。

悪い癖や習慣

指しゃぶりや爪噛み、頬杖、唇噛み、うつぶせ寝……これらの悪い癖も歯並びを悪くします。たとえば指しゃぶりや爪噛みによって、一部の歯が一方向に押され、少しずつ歯並びを悪くしてしまうことがあるのです。悪い癖を治すことも大切ですが、どうしてそんな癖をしてしまうのか、その原因を見つける必要があります。原因を突き止めたら、できるだけ原因を取り除いてあげるようにしましょう。

虫歯

虫歯になって、歯が抜けたり欠けたりすると、歯並びを乱すことがあります。また、虫歯の痛みから片方だけで噛むようになると、口腔内のバランスが乱れて、歯並びが悪くなります。親御さんの中には、「乳歯の虫歯はいずれ生え替わるから……」と治療をせずに放置しておく方もいらっしゃいますが、それは大きな間違いです。乳歯の虫歯によって、将来の永久歯の生え方に影響が出てしまうこともあるのです。

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