小児矯正は意味がないって本当?
「小児矯正はしても意味がないって本当?」
「小児矯正が意味ないって言われている理由はなに?」
このような疑問を抱えていませんか?子どもの歯の健康を考えて早めに矯正治療を行おうとしていた所に「小児矯正は意味がない」との情報が舞い込んできたら、困惑してしまいますよね。
小児矯正は、少し複雑でややこしい一面があります。そのため、巷で色々な情報が錯綜してしまっているようです。
子どもの矯正治療には一期治療と二期治療の2種類あります
小児矯正に意味があるかどうかを解説する前に、まず小児矯正そのものを少し解説させてください。なぜなら、小児矯正と一口に言っても、実は小児矯正は以下の2種類の治療法に分かれるからです。
- 一期治療(早期治療)
- 二期治療
「一期治療と二期治療という言葉を初めて聞いた…」
「小児矯正は意味がないという情報は、一期治療のことを言ってる?それとも二期治療のこと?」
このような疑問が湧いてきたのではないでしょうか。小児矯正は、上記のように2種類に分かれていて少し複雑なため、きちんと理解できている方は多くありません。せっかくの機会なので、ここで一期治療と二期治療について明確に理解していきましょう。一期治療と二期治療について、以下でそれぞれ分かりやすく解説するので、ぜひ併せてご覧ください。
一期治療とは:乳歯と永久歯が混在している時期に行う矯正
一期治療とは、4歳~12歳頃までに開始する矯正治療です。早期治療とも呼びます。子どもの歯(乳歯)と大人の歯(永久歯)が混ざり合っている時期に行うことが大きな特徴です。
一期治療の目的は、永久歯を並べる器の準備、つまり、歯の土台であるあごの骨(歯槽骨)の成長を促進させることです。永久歯は、上あご・下あごそれぞれ全部で14本~16本生えてきます。それにも関わらず、歯の土台が歯10本分しか並べられない小さなサイズだったらどうでしょうか?当然、すべての歯が綺麗に並ぶことはできませんよね。複数の歯が重なり合ってしまって、ガタガタな歯並びになってしまう可能性が高くなります。
そうならないために、あごの適切な成長を促すのが一期治療です。具体的には、拡大床と呼ばれる矯正器具などを用いてあごを正常な幅まで拡げていきます。
二期治療とは:永久歯が生えそろってから行う矯正
一方で、二期治療とは、大体12歳以降に開始する矯正治療のことを指します。永久歯が生えそろった後に行うことが大きな特徴です。
二期治療の目的は、生えそろった永久歯を綺麗に並べることです。一般の歯列矯正とほぼ同じと考えて問題ありません。使用する矯正装置も成人が使用するものと同じで、マルチブラケット(ワイヤー装置)やマウスピース型矯正装置を装着します。
身体はまだまだ成長過程にある中高生でも、上あごに関しては男女ともに10歳頃までに殆ど大きさが決まります。そのため、二期治療では、上あごの成長を利用した矯正治療は基本的にできません。これが、一期治療との大きな違いです。
一期治療は意味がない?混合歯列期に行う矯正治療は意味がないと思われてしまう理由
上記で、一期治療と二期治療それぞれの目的の違いを解説しました。ここからが、本題です。勘の良い方ならすでにお気づきかもしれません。「小児矯正は意味がない」という情報は、一期治療のことを指しています。乳歯と永久歯が混在している混合歯列期に行う一期治療は、意味がないと思われがちなのです。その理由は、以下の通りです。
- 一期治療を行っても、永久歯に生え変わった後に二期治療が必要になったら二度手間のように感じるから
- 結局のところ二期治療も行うなら、治療期間が無駄に延びるだけのように感じるから
一期治療のみで矯正治療が完了するお子さまもいらっしゃることは、いらっしゃいます。しかし、殆どのお子さまが永久歯が生えそろった後に二期治療へ移行することが多いです。それは、どれだけ一期治療を頑張っても、永久歯が最初から綺麗に並んで生えてきてくれるということは稀だからです。
こう聞くと「じゃあ、やっぱり一期治療の意味ってないのでは…」と思われるかもしれませんね。しかし、一期治療は、必要なお子さまが必要なタイミングで行えば、非常に意味のある治療なのです。
抜歯する確率が下がる!一期治療を行う3つの大きなメリット
一期治療は、あごの成長をコントロールできるという大きなメリットがあります。しかし、一期治療を行うメリットはそれだけではありません。ここからは、一期治療を行う他の大きなメリットについて解説します。
一期治療を行う大きなメリットは、以下3点です。
- 二期治療の負担を減らせる
- 口腔習癖の改善が見込める
- アトピーや口臭の改善が見込める
上記3つのメリットについて、以下でそれぞれ詳しく解説します。「子どもの矯正治療はいつ始めればいいんだろう…」と悩み迷われている方は、一期治療のメリットを理解することから始めると良いです。
二期治療の負担を減らせる
一期治療を行う大きなメリットのひとつは、二期治療の負担を減らせることです。一期治療で完了せず二期治療に移行したとしても、二期治療から矯正治療を開始するお子さまに比べれば短い治療期間で終えられる可能性があります。
それだけでなく、一期治療で永久歯の土台となるあごの骨(歯槽骨)を正常な幅まで拡大しているので、新たにスペースを作り出すために抜歯をする可能性が低いです。つまり、一期治療を行っておくことで、健康な歯を失わずに済む可能性が高くなるわけですね。
また、骨格異常による下顎前突(受け口やしゃくれ)や上顎前突(出っ歯)は、一期治療であごの成長をコントロールしておくことで、あごの骨を切るなどの外科手術を回避できる可能性も高くなります。
口腔習癖の改善が見込める
一期治療を行うと、口腔習癖の改善も見込めます。口腔習癖とは、指しゃぶりや口呼吸など、歯並びだけでなく全身の健康に悪影響を及ぼすお口周りの癖のことです。指しゃぶりや口呼吸は、上顎前突(出っ歯)やオープンバイト(開咬)などさまざまな不正咬合の原因になります。
そのため、一期治療ではあごの発育のコントロールのみならず、必要であればお口周りや舌の筋肉のトレーニングも行います。適応能力が高い幼少期にトレーニングすることで、比較的簡単に悪癖を絶てます。大人になってからでは、そうはいきません。
具体的には、プレオルソと呼ばれる上あご・下あご一体型のマウスピース型矯正装置を用いて、お口周りの筋肉を鍛えていきます。プレオルソは、対象年齢が4歳~7歳で、一期治療のタイミングにしかできない治療法です。
アトピーや口臭の改善が見込める
口呼吸から鼻呼吸に切り替えることで、アトピー性皮膚炎の改善が見込めます。口呼吸の場合は、空気中のウイルスや花粉をダイレクトに喉で受けてしまうため、アトピー性皮膚炎を引き起こしたり、風邪をひきやすくなってしまったりする可能性が高いです。しかし、鼻呼吸であれば、ウイルスや花粉は鼻の粘膜フィルターを通って、体内に直接取り込まれないため、種々の体調改善につながります。
そのほか、口臭の改善も見込めます。口臭の原因はさまざまですが、口内の乾きによって細菌が繫殖して口臭を発しているケースであれば、鼻呼吸を習得することで改善されやすいです。常に口を閉じておくことで、口内が乾きにくくなるからです。
一期治療が無駄になってしまう場合も?
一期治療はやみくもに始めればいいというわけではありません。無理に行ってしまうと、メリットではなくデメリットを被ってしまう可能性があるからです。そこで、ここからは一期治療を無理に行わない方が良いケースを解説します。
一期治療を無理に行わない方が良いケースは、以下の2つです。
- お子さまが歯列矯正に消極的な場合
- あごの自然な成長を待った方が良い場合
上記2つのケースについて、以下でそれぞれ詳しく解説します。「メリットがあるなら、すぐにでも一期治療を始めたい」というお気持ちを一旦脇に置いて、デメリットも併せて理解しましょう。
ケース①:お子さまが歯列矯正に消極的な場合
お子さまが歯列矯正に消極的な場合は、無理に行わない方が良いです。お子さま自身が矯正治療の意味を理解できなかったり、お子さまの意思に反していたりすると、お子さまのストレスになりやすいからです。
また、お子さまの意思に反している場合は、お子さまが治療に非協力になってしまうこともあります。そうすると、せっかく早めの矯正治療を行っても、治療の効果を得られず、費用と時間の無駄になるリスクも伴うのです。
そのため、一期治療を検討する場合は、お子さまのお気持ちを無視せず、しっかりとコミュニケーションを図ることを忘れないでください。
ケース②:あごの自然な成長を待った方が良い場合
あごの自然な成長を待った方が良いケースも、一期治療を見送る場合があります。上記で解説したように、下顎前突(受け口やしゃくれ)や上顎前突(出っ歯)など幼少期の頃から骨格異常が見つかっている場合は、あごの成長をコントロールする一期治療が必要なケースが多いです。
しかし、特別に骨格異常がなく、あごの自然な成長を経過観察するだけで良い場合は注意してください。必要がないのに、あごの拡大を促す治療を行ってしまうと、歯列が広がり過ぎて噛みづらくなる危険性があります。
そのため、一期治療を行う前は必ず歯科で精密検査を行った上で、先を見据えた矯正方法を見極めることが重要です。初診相談であれば無料で行っている歯科が多いので、ぜひ積極的にご活用ください。お子さまが小学校に入学したタイミングで矯正相談を受けておくと、矯正方法の選択の幅が広がります。