睡眠障害の1つである不眠症は、ストレスや生活習慣、全身疾患などが原因としてよく挙げられますが、実は歯並びや噛み合わせとの関連性も指摘されています。さらに近年クローズアップされている睡眠時無呼吸症候群においても、その原因が肥満のみならず、歯並びや顎の形態なども関係していることがわかっています。

歯並びや噛み合わせが睡眠に及ぼす影響

歯並びが悪いことで生じるトラブルは、「見た目が悪い」「虫歯や歯周病になりやすい」ばかりではありません。歯並びが悪いと噛み合わせも悪くなるケースが多く、その噛み合わせの悪さが私たちの心身にも様々な影響を及ぼし、体の不調の原因となっています。不眠症などの睡眠障害もその1つです。

噛み合わせの悪さはストレスになる

不眠症の代表的な原因にストレスがあります。それは強いストレスによって自律神経のバランスが崩れ、心身が常に緊張した状態になることで引き起こされます。
自律神経には交感神経、副交感神経の2つがあります。交感神経は日中に優位に働き、脳と体が活動しやすいように心拍数や血圧を上げ、血流を活発にします。一方、副交感神経は夕方から夜にかけて優位に働き、心拍数や血圧を下げ、体を休めて修復するように働きかけます。
私たちの体はこの2つの神経によって消化や吸収、心拍、血圧、新陳代謝などの機能を調整しながら、体内環境を一定に保っています。
歯並びの悪さによる噛み合わせの微妙なズレは、周囲にある神経や筋肉、関節などを常に緊張させ、それがストレスとなって交感神経を持続的に刺激します。つまり噛み合わせの異常は自律神経を乱すことで不眠の原因になってしまうのです。

 

噛み合わせが悪いと体がゆがむ

体のゆがみは睡眠の質を落とします。なぜなら体のゆがみが頭痛や肩こり、腰痛を引き起こし、これによって「眠りが浅い」「寝づらい」などの睡眠障害を招くからです。二足歩行が基本である人間は、その姿勢を保つために左右でうまくバランスを取らなくてはなりません。そのバランスが少しでも崩れると一部の筋肉や神経に負担がかかり、体がゆがんでいきます。
噛み合わせも体がバランスを取るために必要な要素の1つです。噛み合わせが悪いとその周囲の神経や筋肉に負担を与え、その負担は首の回りや肩の周りの筋肉にまで波及します。この負担が長く続くと、頭の位置や背骨などにズレが生じ、体のゆがみへとつながります。つまり噛み合わせの悪さが体をゆがませ、それによって生じる体の不調が睡眠の質を落とす原因になってしまうのです。

睡眠時無呼吸症候群と歯並びの関係

睡眠障害の中でも特に注目を集めている睡眠時無呼吸症候群は、以前は肥満の人がなる病気だと考えられていました。しかし近年では痩せている人でもこの病気になることが明らかになり、その原因が歯並びや顎の骨格異常にあることが指摘されています。

睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まるなどの呼吸障害が起こる病気です。具体的には、「7時間の夜間睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上あるか、あるいは1時間あたり5回以上の無呼吸があること」と定義づけられています。この状態が長く続くと睡眠の質が悪くなり、その結果日中に強い眠気が生じ、集中力や判断力が低下してしまいます。また体内の酸素の量が不足することにより、心臓や肺などにも大きく負担をかける原因にもなります。

睡眠時無呼吸症候群の原因と噛み合わせ

睡眠時無呼吸症候群の中でも閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に喉や気道(空気の通り道)が狭まることで起こる呼吸障害です。この呼吸障害が、歯並びや顎の形態にも原因があると言われるようになっています。

歯科においては、下顎が小さい、後ろに下がっている、歯列弓(歯の並びが描く曲線)が狭いなどが、就寝中に喉や気道を塞ぐ要因になることがわかっています。これは噛み合わせの安定が呼吸を正常にすることにも大きく関わっていることを示唆します。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群における歯科のアプローチとしては、マウスピースを装着し下顎をやや前方位に置くことで、気道を広げ、睡眠中の呼吸を促す効果が期待できます。医科におけるCPAP療法(睡眠中に鼻から空気を送り気道を確保する治療法)と比べると、持ち運びが簡単で、旅行や出張先などでも使用できるメリットがあります。

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